気持ちの良い空間#02

以前の記事で気持ちの良い半屋外空間を紹介しましたが、あずまやとは異なり奈良ではおそらく初めてではないかなと思うような巨大なスケールの空間が最近できたので紹介したいと思います。

 奈良県コンベンションセンターとNHK奈良放送局・ツタヤ書店の間にある大屋根の架けられた半屋外空間がとても良いです。下の写真のように大屋根はところどころトップライトになっている部分があって暗くならないように工夫されていますが、そのトップライトから入ってくる直射光が木漏れ日のように舗装面に綺麗な光の模様を描いています。

 東京や大阪などの都心部では、商業施設を中心に建物の2階や3階の高さに大屋根を架けた半屋外空間がたくさん作られていて、現代のアーケード商店街といった特異なパブリック空間となっており、楽しい都市の生活を演出しています。

 奈良にもそんな建築空間が出来るのかと工事中から楽しみにしていました。でもせっかくの気持ちの良い空間が、十分に活用されていないのがちょっと残念です。

 その要因は建物の1階部分とこの半屋外空間が完全に分離されてしまっていることにあると思います。各建物の出入り口以外はすべてはめ殺しのガラス窓となっているので、屋内空間と屋外空間が混ざり合う場所が全く無いのです。建物の出入り口以外にも掃出し窓となっているなど、もう少し内部空間を外に向かって開くような工夫がなされていれば、この素晴らしい空間をもっと楽しめたのではないかと思います。全面ガラス張りの建築で、「内と外をつなげた」というようなことを耳にすることがありますが、ガラスがつなぐのは視覚でしかなく、場合によっては視覚でつながっている分だけ余計にその内と外の分断が鮮明になることもあるのではないかと思います。都市の喧騒が聞こえてくることもなく、風や空気の湿り気を感じることもできない空間は、外界からは遮断された空間だと私たちの体は感じ取るのです。それはそれで内部空間の大切な役割なのですが。

 例えば、スターバックスがこの空間にテーブルを置くとかすることが出来たなら、それだけで随分違った空間になるのではないかと思います。もしヨーロッパでこのような空間ができたら、この部分はカフェやレストランのテーブルで埋め尽くされるのではないかと想像してしまいます。あるいはコンベンション時のレセプションやイベントなども、この半屋外空間も合わせて考えることが出来るので、より活き活きしたものになるでしょう。

 県の施設ですが、事業手法として民間の資金を活用したPFI(プライベートファイナンスイニシアチブ)という方法を採用されていて、管理の仕方など色々複雑な制約もあるのでしょうが、せっかく立派な屋根を架けているので、この空間をもっと上手く活用できればと思います。