著書解題の著書紹介
以前の記事でご紹介したLIXIL出版(出版された当時はINAX出版)の「著書解題」ですが、今回はその中で解題の俎上に挙げられている、書籍をご紹介したいと思います。私もこの「著書解題」を読んだ後で、それぞれの著作を読んで見たいと思い手当たり次第に片っ端から読んでいきました。なので、著書解題で俎上に挙げられている本を読んでいなくても、十分に楽しめる内容になっておりますので、安心してください。それだけ内藤廣さんの話の展開のさせ方がうまいということでもあります。
著書の多くは60~70年代に出されたものがほとんどなのですが、おそらくこの「著書解題」がきっかけとなって、文庫に入ったり復刻したりしているものが多く(今のところは)比較的入手しやすいのも嬉しいです。内藤さんの言われるように「装丁の美しい」単行本(決して今の復刻版が装丁が美しくないという意味ではない)を手に入れるのは非常に困難なので残念ですが、50年以上も前に書かれた著作を、読めるということだけでも出版社の方に感謝しなくてはいけませんね。
では「著書解題」で取り上げられている順序通りに現在入手可能なものを挙げていきましょう。クリックすると別ウインドウが開きます。
長谷川堯「SD選書247 神殿か獄舎か」鹿島出版会、2007年
菊竹清訓「復刻版 代謝建築論 か・かた・かたち」彰国社、2008年
槇文彦「SD選書162 見えがくれする都市」鹿島出版会、1980年
なお、原広司「建築に何が可能か」宮内嘉久「建築ジャーナリズム無頼」林昌二「建築家 林昌二読本」川添登「建築の滅亡」は復刻版等出ておらずオリジナルを入手する以外に手段は無さそうです。今(2020.10.08現在)調べてみたところ、「建築ジャーナリズム無頼」はウェブ通販上に在庫があるようです。植田実「都市住宅」は雑誌、石元泰博「桂」は写真集なので復刻ということはないでしょう。図書館で借りるという手もあるのですが、内藤さんいわく「借りたのではダメだ。安いアルバイトで稼いだなけなしの金で購入し、手垢がつき、そして自らの本棚に収まってこそ、読者の思考の履歴となる。」ので、なんとしてでも手に入れたいところ。
槇文彦「見えがくれする都市」は80年にSD選書に入って以来40年ずっと版を重ねて重版され続けています。凄いですね。私の持っているSD選書も旧装丁版。大学生の時に買ったものです。
そこで、お世話になるのがweb古書店。インターネットの功罪については様々言われておりますが、このweb古書店に関しては、読書の可能性を広げたという意味で、人類史上最大の貢献をしているのではないかと思っています。そもそも地方に住んでいると古書店がほとんどなく、上記で紹介したような専門的なものとなると皆無に等しい。仮に神保町付近に住んでいたとしても、専門書ゆえ当時の発行部数もそんなに多くはないので、容易に見つけれられるものではないと思います。名著ゆえ所有している人もそうそう手放さない。ちなみに「林昌二毒本」は2004年と比較的最近の本なのですが、版元で売り切れとなっており、古書でも入手するのは結構難しいのですが、幸運にもweb古書店様のおかげで手に入れることができました。
この著書は写真でもわかる通り飛び抜けてボリュームが大きく、内容の濃さも物凄いです。総ページ数なんと365!! 驚いたのは、今や世界一とも言われる組織設計事務所である日建設計の黎明期に入社された林さんの机が置かれていたのはなんと「湯沸かし室」であったということ。お湯を使うとトレペが波々になっちゃう、というエピソードには思わず笑ってしまいます。あの日建設計がそんなだったのかと、今や近づくのも恐ろしいような巨大事務所ですが、どんな企業でも個人でも、みんなそういうところからのし上がってきたんだなと、少し勇気をもらえます。そんな、秘蔵トーク満載で通読すれば戦後の日本建築を一望俯瞰できるような素晴らしい本なので、なんとか復刻してもらえないですかね。新建築さん、よろしくお願いします。