今回は建築を立ち上げる上で最も重要な要素である地盤と基礎について

 地盤と基礎については、建築が完成してしまうとほとんど意識されないので、特に知らないことが多いのではないでしょうか。でも地盤が悪ければ、どれほど立派な建築もその場所に存在することはできないので、その意味でとても重要な部分なのです。何事によらず基礎は大事ですからね。

地盤

 地盤の調査とはどのように行うのかご存じの方はどの程度いるでしょうか。建築関係の仕事をされている人以外で知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。どんなプロジェクトであっても敷地が決まれば、設計に入る前に必ず地盤調査を行います。地盤のデータ無くしては、基礎の設計ができないからです。

 住宅程度の大きさであればほとんど全ての場合においてスウェーデン式サウンディング調査というものを行います。大そうな名称ですが、実はとっても単純で原始的な方法で地盤の固さから地質を「推定」しているのです。

ロッドの先端(左)とサウンディング調査用の機械(右)

おもりを載せたロッドと呼ばれる鉄製の槍のようなものを地面に突き刺して、25cm貫入するのに何回転要したかを記録する試験を行います。地盤が柔らかいと少ない回転数で貫入していきます。(びっくりするくらい単純ですよね)私たちはかなり高度な科学技術の世界を生きていると思いがちですが、自分の足元10cmの深さがどのようになっているのかさえ知ろうとすると結構難しいのです。謙虚な姿勢というのは大切です。

 そうして得られた情報から基礎の形状や鉄筋の量などの基礎形式を決めていきます。特に軟弱な地盤の場合は地盤改良を行って土を固化させたり、固い地盤まで届くように杭を打ったりという必要が出てきます。どちらもそれなりのコストを要するので土地選びは慎重に行う必要があります。

基礎

最近の住宅はほとんどが「べた基礎」と呼ばれる基礎形状となっていると思います。

べた基礎の工事中

 住宅の建設現場などで上の写真のような基礎を構築しているのを見かけることがあると思います。基礎の形式としてはべた基礎の他に、独立基礎や布基礎があります。べた基礎が全体の面として荷重を支えるのに対し、独立基礎では点、布基礎では線状に荷重を支えるため不等沈下が起きやすいので、地盤がよほど強固でない限りあまり用いられません。またべた基礎では地面とも完全に縁が切れるので断熱的にも有利というメリットがあります。ただコンクリートの量が増えるというデメリットはありますが、基礎の不等沈下は建築物全体に悪影響を及ぼすので、ほぼ全ての建築物でべた基礎が採用されているのです。

べた基礎と布基礎の断面模式図

布基礎は逆T字の形をしています。この基礎を外周部と内部柱の直下に線状に構築し建物の荷重を支持します。一方のべた基礎では外周部の基礎部分とそれに囲まれる部分に耐圧版と呼ばれる板状の鉄筋コンクリートを構築します。これによってべた基礎では外周部によって囲まれた面全体で荷重を支持しています。よって地盤が不均質であっても不等沈下が生じにくくなるのです。

べた基礎の構成

基礎工事は、まず砕石を敷き詰めよく転圧します。これによって建築物の荷重が均等に地盤に伝わります。それから均しコンクリートを薄く敷き均して水平面を構築します。それからようやく鉄筋を組んだ型枠の中にコンクリートを流し込み基礎を構築します。上記の写真は型枠にコンクリートを流し終えたところです。2週間ほどコンクリートが固まるのを待って、土台を作る作業に入っていきます。

基礎と土台は一般的に同じような意味合いで使われていますが、建築用語でいう基礎と土台は全く別物なのですよ。次回は土台の話。