ひきつづき窓について。

 house iでは敷地の東側は隣家が迫っており、窓は限定せざるを得ませんでした。ですが、やはり朝日は取り込みたいので、その限られた窓から入ってくる光を印象的に見えるようにと考えた結果が下の写真です。

 この雰囲気、何かに似ていると思いませんか?

 実はこの窓、フェルメールの絵によく登場する「左手にある高窓から差し込むあかり」を意識して設計しました。ちょっとした遊び心です。これは2階の南東角にある書斎の窓なのですが、この部屋は、フェルメールの光の演出のため南側には一切窓を作っていません。だいぶ悩んだのですが、窓は東面のみに限定し、壁の仕上げを漆喰塗としたことでとても柔らかい印象の光で部屋が満たされるようになり、光の扱いがうまくいったのではないかと思います。暗くならないだろうかと心配したのですが、白い漆喰の壁がほどよく光を反射して「静謐な」という言葉で形容したくなるような空間となりました。

 このように窓は大きく開けることよりも、いかに限定するかと考えたときに非常に難しくなります。ですが、そうすることによって、部屋中全てが均一に明るいよりも、時間や季節によって明るくなったり、ほんのり暗い場所が出来たりといった変化を楽しむことができるようになります。夏が過ぎて秋が深まってくると部屋の奥まで日光が直達するようになったり、朝日の昇ってくる位置がだいぶ南に動いてきたなとか、部屋に入ってくる光が如実に変わっていくのを窺い知ることができます。

 窓の設計は、いつもとても難しいですが、建物が立ち上がって壁が張られ、工事途中そこにぽっかりと空いた開口部から光が差し込んでくるのを体験すると、建築設計という仕事の素晴らしさを実感します。