外壁が出来、窓が嵌め込まれると、床・壁・天井の仕上げ=内装工事に取り掛かります。

 内装の話を書こうとしていたところ、タイミングよく今月4日に発売されたインテリア雑誌の「コンフォルト」が特集テーマとして掲げているのが『素材に帰ろう』。その特集の1つである、インテリア素材図鑑がとても素晴らしく、家をつくろうと考えておられる方はぜひ購入されることをおすすめします。その「素材図鑑」では建築に使われる代表的な素材である、木・紙・土・タイル・石の5つについて詳述されており、それぞれの素材の基本的知識から種類、内装材としての加工のされ方、実例の紹介と、これ1冊でインテリアをマスターできる充実ぶりです。この雑誌は発行しているのが、建築資料研究社というところで、購読者もほとんどが建築関係の人ではないかなと思いますが、この特集号は建築関係以外の方にも楽しめる内容になっているのではないかと思います。

 そして記念対談では、建築家の堀部安嗣さんのお相手がなんと、作家の高橋源一郎さん。お二人の対談は「場所に結び付いた記憶」というところから死者と他者との共存へとダイナミックに展開していく。建築はそういったものをつなぎ合わせる力を持っているというところに深く同感しました。そして、そういった長い時間を内包する建築を作りたい(しかしそれはとても難しい)と奮闘しています。

内装

 それでは、内装工事に戻りましょう。内装は建物内部の仕上げ材で、直接体に触れ、最も近い位置で毎日目にすることになる部分なので、とにかく自分の気に入ったものを選択するのが良いと思います。内装材は木だけでも、樹種、材としての厚みや巾、貼り方、塗料の有無、などなど無限にあるといっても過言ではないので、結構難しいと思いますが、気に入りのお店とか、好きだなと思う空間に出会った時に、その空間はどんな材を使って作られているのかなと、気にするだけでも建築を見る目が変わってくると思います。

 施工の順番としては、仕上げ材なので汚れないように上から行うのが原則です。納まりの仕方や素材によっては必ずしもそうならないこともありますが。2階の天井は杉板の無節と呼ばれる節の無いちょっと高価な材を使っています。下の写真で分かる通り、節が全くないとてもきれいな天井に仕上がりました。

 ちなみにhouse i の木材は地元奈良の誇るブランド吉野杉・桧を用いています。吉野杉の植林をされている山を見せていただいたときに教わったのですが、その特長は「密植・多間伐・長伐期」と言われており、密に植えることで成長のスピードを抑え年輪の詰まった丈夫な材に仕立てるという手法で、当然材になるまで時間と手間がかかります。そういう現場を見ると、大事に使わないとという気になりますし、愛着も湧きます。でも、元気な子ども達のおかげで床はすでに傷だらけなんですけどね。(笑)それもまた味わいとなる日が来る!・・・のか?

密植の様子が窺い知れる昼間でも薄暗い杉林

 さて、天井を張り終えると今度は壁です。内壁の下地材であるせっこうボードを張り付け、漆喰を塗っていきます。上の写真の場ベージュ色に見えているところがせっこうボードを張った部分です。その裏の白い部分が断熱材。

 漆喰は消石灰+海藻糊+麻スサで作られます。

 消石灰とは、水酸化カルシウム(化学式で書くとCa(OH)2ですね。アレルギー出てませんか(笑)?)のことで、石灰岩を焼いて作られます。石灰岩はサンゴなどの死骸が堆積して石化したものです。粉末状の消石灰に海藻から作られる糊と麻スサ(麻を細かく切り刻んだものでつなぎ材、ハンバーグでいうところのパン粉、の役目をします)と水を混ぜてこねると粘り気が出てきます。写真では真っ白になってしまいその質感が伝わらなくて残念ですが、手作業の跡が残る微妙な凹凸がとても良いあじわいとなっています。

 手作業の跡が感じられるというのは、多くの人の手によって建築というのは成立しているのだということを毎日思い起こさせてくれるので、やっぱりいいですね。そして手作業で現場で作られるということは、手作業によって補修ができるというこ。これは長く建築を使っていく上でとても大事なことだと思います。

漆喰塗の現場 大量のバケツと攪拌のためのミキサーが見える
漆喰を塗り終えたところ 

 そして、最後に床ですが、これも吉野杉を使っています。杉などの針葉樹は一般的に柔らかくて傷つきやすいので、床材としては敬遠されることもあるのですが、その分足ざわりがとても気持ちよく寝転んでもとても気持ちいいです。あたたかみのある、という表現をされることがよくありますが、木材は他の建築材料と比べて熱伝導率が低いので、実際に暖かいのです。

  建材の熱伝導率 木=0.15、塩ビ=0.17、ガラス=0.8、コンクリート=1.6、鉄=83、アルミ=236 (単位 W/m・K) 

  出展:前 真之「エコハウスのウソ[増補改訂版]」日経BP社、2015年

床材も節のない綺麗な吉野杉

 写真右手に見える一部黒くなった壁には、マグネット塗料というものを塗っています。鉄粉を混ぜた顔料で、磁石がくっつきます。あまり磁力は強くないので重たいものは留められないですが、プリントの多い小学生がいらっしゃるご家庭などでは重宝すると思います。

 ここまでくると内部は造作工事と各設備機器の取り付けで竣工までもうすぐです。でもその前に次回は建物の寿命を大きく左右する外部の仕上げについて。